Happy Hack! 第6回 -「キーボードは靴のようなもの」1日12時間タイピングするジャーナリスト西田宗千佳の仕事哲学

みなさん、こんにちは。テックメディア「ガジェタッチ」のリンクマンです。ガジェタッチとHHKBとのコラボYouTube番組「Happy Hack! ~僕らのライフスタイル~」の6回目が5月9日に配信されました。
この番組は、外付けキーボード愛用者をお招きして、キーボードへのこだわり、キーボードを中心とした仕事道具、ライフスタイルについてとことん語っていただくキーボード中心のライフスタイル・バラエティ番組です。
この番組6回目のゲストは、フリージャーナリストの西田宗千佳さん。そして今回から、ITジャーナリストの松村太郎さんもレギュラーとして参加してもらうことになりました。
西田宗千佳さんのこだわりはロープロファイル
実は西田さん、HHKBは持っているもののメインでは使っていないとのこと。その理由はキーの高いキーボード(フルハイト)ではなく、キーの高さが低いロープロファイル愛用者だったのです。なので、メインで使っているキーボードはロープロファイルのキーボード、出先の場合はMacBookのキーボードをそのまま使うことが多いそうです。

この話の流れから、キーボードの好みのストロークの深さの話に展開していきます。ロープロファイル派とフルハイト派の感覚の違いとして、キーを押し込んだ時の時間の違いの話は興味深かったですね。西田さんの場合は、キーを底まできっかりと打つタイプなため、フルハイトのキーボードだとどうしても深く感じてしまうと話していました。
現時点で自分に最適なキーボードとして挙げていたのが、Alice配列の分割型キーボード。Alice配列というのは通常のキーボードの配列と違い、中央に隙間があり左右がハの字に配列されているものです。

ちなみに、そんなベストな解を見つけつつ、今までに大体10個ぐらいのキーボードを試してきた西田さんは、現在は分割キーボードをメインとして使っているそうです。この理由として、分割キーボードを使うことで肩幅が開き、肩こりが軽減されるとライターの村上タクタ氏から言われ、試しているそうですが、現在のところ肩こりが軽減しているかはわかっていないとのこと…。この辺はやはり個人差ありますよね。
1日のルーティンとキーボードに触れる時間の長さ
1日にキーボードを触っている時間は?という質問に、西田さんは「長い時で12時間」と1日の半分をキーボードと共に過ごしていると話してくれました。これはやはり本の執筆で締め切りが迫ってくるとどうしても長い時間キーボードに向かうことになるそうで、取材がない日は朝7時30分から仕事開始して、22時までそのまま仕事をしていることもあるそうで、もう12時間を軽々と超えていますが、やはり相当な時間キーボードを使っていることになりますね。

コロナ禍が終わってから仕事場を借用。朝その仕事場に行き、夜まで仕事して自宅に帰るそうですが、仕事は仕事場でしかやらず、自宅にiPadはあるものの、Macなどは持ち帰らず、そこはしっかりオンとオフを分けるようにしているようです。
ここで太郎さんから、iPadのキーボードについての質問が飛び出します。ソフトウェアキーボードはいわばゼロプロファイルとも呼べるものですが、これについてはどうですか?という問いに対して、西田さんは「そんなに悪くないです」と答えます。

ソフトウェアキーボードの場合は、iPadをどの角度に置くかといったことの方が重要でその部分でしっかり固定できない部分は弱点だが、キーボードを叩くということについてはそこまで違和感はないそうです。ちなみに、西田さんは13インチサイズの大きいiPadを使っているのもポイント。やはりディスプレイが小さいとキーボードの占有率が上がってしまうので打ちづらくなるというのはありますね。
ちなみにこぼれ話として、西田さんスマートフォンのキー入力でフリック入力は使わず、全てQWERTYキーで入力するそうです。また、原稿執筆の際は、打っている文章の4行先まで頭の中で考えながらタイピングしており、タイピングという行為が思考のバッファになっているとも語っていました。逆に音声認識が苦手なのは、音声だとバッファが2行分くらいしかないからとのこと。タイピングすることで、より先の思考を整理できるんですね。
気分で選ぶ!西田さんの「キーボード使い分け術」
さらに話していくうちに、その日の気分によって選ぶキーボードというマニアックな話に進んできます。西田さんは日によって、打鍵音がしっかりカチカチなるキーボードを使う時もあれば、音が小さいキーボードを使う時もあるそう。逆にこれはキーボードにこだわっているのではなく、タイプすること自体が感覚的な楽しみなので、一つのキーボードだけにとどまらず、日によって、気分によってキーボードを変える、さらにはノートパソコンのキーボードでも大丈夫、英語配列、日本語配列どちらでも対応できるというオールマイティさを持っているというのはかなり面白いところでした。
キーボードを愛する人の中には、このキーボードじゃなければいけないという拘りがある人が多くいますが、そことは対極のような位置にいながらも、そのキーボードやタイピングにかける愛は変わらないという、キーボード好きというだけで一括りにすることができず、みなさんそれぞれに拘るポイントが少しずつ違っているというのが、このキーボード業界の幅の広さ、そして奥の深さなんだなと感じました。
新コーナー 「キーボードのある作業スペース見せてください!」
今回から新コーナー「キーボードのある作業スペース見せてください!」がスタートしました。ゲストの方のキーボードのある作業スペース、すなわち仕事をメインでする場所を写真に撮ってきていただき、キーボードと共にどんなガジェットやツール、環境などでお仕事をしているのかを探るコーナーです。

まず特徴的だったのが、デスクがL字型になっているところですね。右側のメインで仕事をする方にはMacBook Proを外付けの27インチOLEDモニターに出力し、分割キーボードを使いながら記事の執筆などを行なっているそうです。
そして左側にはNASとしても使っているMac miniが接続された48インチのTVが設置されていて、こちらは仕事として映画を見たり、ゲームをしたりする用途で使われているそうです。他にもWindows PCなどもチェック用に設置されていたり、大人の基地のようであり、仕事に最適化されている環境を構築されていました。
ちなみにL字においたデスクは2000円~3000円のものを2個用意しただけなので、実はかなりコスト安く作られているそうです。自分もこういったデスクはもちろん配置的なものは色々試しているものの、なかなか最適解が見つかっていないので、西田さんのこのレイアウトはかなり参考になりますね。

その他にも3Dプリンタが置いてあるデスクがあり、デスクにある小物などは結構自作しているそうです。その中で「HHKB Studioが3Dデータを公開している」という話になり、「ロープロファイルキーも作れば、もしかしたら西田さんもHHKB派になるんじゃないか」という話も飛び出していました。
無刻印チャレンジ
そして、今回もこの番組の人気企画「無刻印チャレンジ」に西田さんにチャレンジしていただきました。このコーナーでは、「タイピング速度測定(タイ速)」を使い、ランダムに出てくる文章を30秒以内にHHKB Studioの無刻印モデルを使ってどれだけタイピングできるかを競います。

緊張感の中、チャレンジがスタートしましたが、途中ハプニングもあり、結果は「B++」でした。慣れない無刻印モデルや、普段使っているロープロファイルキーボードとの違いが影響したのかもしれませんね。

一方、レギュラーに昇格した太郎さんは貫禄の「A++」を叩き出していました。前回よりは成績は落ちてしまいましたが、しっかり高得点を出してくるあたりはさすがですね。この様子や太郎さんの模範演技はぜひ動画で見ていただきたいです。
なお、今回筆者のチャレンジは一回お休みをいただきました。次回はパワーアップしてこの無刻印チャレンジに帰ってくることをお約束します!
西田宗千佳さんにとってキーボードはどんな存在?
番組の最後に、ゲストに必ずお聞きしている質問「キーボードはどんな存在ですか?」という問いに対して、西田さんの答えはシンプルに一言、「靴」と答えました。

番組内でもサッカーのスパイクの例えも出てきましたが、やはり一番感覚が伝わる、そして、その時々のコンディションに合わせて最適なものを選びたい、まさに西田さんのキーボード哲学が集約された一言だと感じました。
今回は、ロープロファイルへのこだわりや、たくさんのキーボードを使い分ける理由、そしてユニークな作業スペースまで、西田さんのディープなキーボードライフを聞くことができ、まさにマニアックで深い話でしたが、あっという間の1時間でした。
なお、西田さんの新刊「スマホはどこへ向かうのか? 41の視点で読み解くスマホの現在と未来」も5月20日に発売されていますので、こちらもぜひチェックしてみてください。
執筆者
リンクマン
Podcast、YouTube、Webメディアを展開するGadgetouchの主催のひとり。ガジェタッチでは出演、動画制作、ライター、エディターを担当。さらに、個人の活動としてラジオのコメンテーターなどを務めることもある。