Happy Hack!第8回 - 堀口英剛さんが辿り着いた「脳と直結した体の一部」としてのキーボード
みなさん、こんにちは。テックメディア「ガジェタッチ」のリンクマンです。ガジェタッチとHHKBとのコラボYouTube番組「Happy Hack! ~僕らのライフスタイル~」の第8回が9月30日に配信されました。
この番組は、外付けキーボードの愛用者をお招きし、キーボードへのこだわり、キーボードを中心とした仕事道具、ライフスタイルについてとことん語っていただくキーボード中心のライフスタイル・バラエティ番組です。
第8回目のゲストは、株式会社ドリップ代表取締役CEOであり、YouTubeチャンネルmonographを運営する堀口英剛さん。堀口さんは暮らしのものアドバイザーとして活動し、日々の暮らしをアップデートする生活雑貨ブランド「drip」を立ち上げ、商品開発にも精力的に取り組んでいます。そしてレギュラーには、ITジャーナリスト、HHKBニスタの松村太郎さんが参加しています。
堀口英剛さんのキーボード遍歴と「音」への深いこだわり
堀口さんがキーボードの「沼」にハマり始めたのは、およそ1年ほど前(2024年)と比較的最近のことです。実は、この沼入りのきっかけには、HHKBニスタの松村太郎さんの影響があったと話します。
それは、2024年にApple本社を訪問した際に松村太郎さんをはじめとする先輩ジャーナリストの勧めでApple Vision Proを購入。そのApple Vision Proを装着して作業する際、手元が「こじんまりしている」と感じ、「未来の作業の形はこれじゃない」という疑問が生まれたそうです。
この未来の作業形態に合う形を追求した結果、堀口さんがたどり着いたのが分割キーボードでした。分割キーボードは、体を開き、肩も広がり、目線も違ってくるため、空間コンピューティング環境での理想的な作業姿勢を実現できると考えたからです。
一般的には様々なキーボードを経て分割キーボードに至るケースが多い中、堀口さんはライフスタイルに合わせて必要な道具を追求する「ダイレクト発想」で、いきなり分割キーボードに到達しました。
堀口さんがHHKBをメインにしなかった理由として、主にカフェやオフィスなど出先での作業が中心であるため、HHKBのような外付けキーボードを毎日持ち運ぶ際の「重さ」や「大きさ」がネックになると感じていたためだと説明しています。
また、堀口さんはMacBookの純正キーボードの短いストローク(1mm)が好きだという点から、キーボードの深さが浅いロープロファイル派であることも判明しました。配列については、過去にはMacBookのキーボードにステッカーを貼って無刻印風にしたり、見た目のかっこよさからUS配列を好むなど、強いこだわりを持っています。US配列は日本語配列よりも記号の配置が直感的だと感じており、かなの刻印がキーボードにあるというのもあまり好きではなく、US配列を支持する理由と話していました。
わずか1年で実現した自作キーボードの量産化
分割キーボードにたどり着いた堀口さんは、さらに理想を追求していきます。最初に使い始めたトラックボール付きの分割キーボード「キーボール」が有線接続だったため、「無線化(ワイヤレス化)」や遅延の解消といった更なる要望が出てきたため、最終的には自分で基板を設計し、オリジナルのキーボードを作り上げました。
開発過程では、ChatGPTが作り方を教えてくれたり、3Dプリンターを駆使してキーキャップや筐体を作ったりと、テクノロジーを積極的に活用。堀口さんは「徹夜でやるのが楽しかった」「モチベーションがすごかった」と、ものづくりへの熱い情熱を語りました。
完成したオリジナルの分割キーボード「conductor」は非常にコンパクトかつ軽量であり、胸ポケットに入るほどの小ささ。特にMagSafe規格のマグネットが背面に搭載されているため、持ち運びやスタンド利用が容易になっています。
トラックボールに使用されているボールも特注に近いもので、市販品がないため工業用のベアリングの中身を見つけてきたそうです。さらに表面をざらつかせることで、指に吸い付きやすく、センサーの反応も良いように工夫されています。
現在、このオリジナルキーボードはすでに出荷台数が300~400台程度となっており、予約待ちのメンバーシップ会員も800~900人いるという驚異的な反響を見せています。
カフェでもキーボードのある場所が作業スペースに
新コーナー「キーボードのある作業スペースを見せてください!」では、堀口さんの未来的な作業環境が披露されました。一つは、MacBook Airをスタンドで立て、手前に分割キーボードを置いてカフェで作業する一般的なスタイル。
そしてもう一つが、XRデバイス「XREAL Air 1 Pro」を装着して作業する近未来的なスタイルです。MacBookを繋ぎ、ディスプレイはXRデバイス内に映し出すため、机の上にはキーボードとXRデバイス本体しかなく、何にも置かない環境で作業が可能となっています。
堀口さんは、この分割キーボードとXRデバイスの組み合わせについて、「本当に未来だね」とコメント。特に分割キーボードを使用することで、体が開き、姿勢が良い状態を保てる点を高く評価していました。また、キーボードの「押した感覚」が、人間が作業をする上で重要であることも改めて実感したそうです。
無刻印チャレンジ
番組の人気企画である「無刻印チャレンジ」に堀口さんが挑戦しました。これは、HHKB Studioの無刻印モデルを使い、30秒間でランダムな文章をどれだけタイピングできるかを競うものです。
普段から無刻印モデルには慣れている堀口さんですが、普段使用しているカスタムキーボードとキーピッチやキーの深さが違うことへの懸念を示しました。結果はB+。ただ、堀口さんは打鍵感について「打ちやすい」「気持ちいい」と感想を述べていて、ハマる理由がわかると話していました。
なお、その後チャレンジした松村太郎さんは、さすがの実力でSSランクを叩き出し、HHKBニスタとしての役割をしっかり果たしていました。
堀口英剛さんにとってキーボードはどんな存在?
番組の最後に、ゲストに必ずお聞きする質問「キーボードはどんな存在ですか?」に対し、堀口さんは「脳と直結した体の一部」と回答しました。
特に現在の分割キーボードは、思考と同時に指が動いている感覚があり、この一体感が非常に気持ちよいと語っています。堀口さんは、将来的にはキーボードを体の一部として「ICチップを埋め込みたい」という願望があるほど、キーボードとの一体感を求めていることが伝わってきました。
堀口さんの情熱と、わずか1年で自らの理想を形にしたその行動力に本当に驚きました。キーボードへの熱が、観葉植物など他の趣味にも共通する「はまったらとことん突き詰める」という堀口さんの生き方、そしてライフスタイルを表している感じがしました。
執筆者
リンクマン
Podcast、YouTube、Webメディアを展開するGadgetouchの主催のひとり。ガジェタッチでは出演、動画制作、ライター、エディターを担当。さらに、個人の活動としてラジオのコメンテーターなどを務めることもある。







