累計出荷台数71万台突破!
HHKBユーザーミートアップ Vol.8 イベントレポート

2024年11月7日、ベルサール神田で「HHKBユーザーミートアップ Vol.8」が開催されました。ユーザーミートアップは2017年に秋葉原で第1回が開催され、その後毎年開催されています。熱量の高いHHKBファンの皆さんが集い、昨年は「HHKB Studio」が発売されて大いに盛り上がりました。今年も会場が満席になるほどのユーザーが集まりました。今回は、「HHKBユーザーミートアップ Vol.8」の様子をレポートします。

■開会の挨拶、「能登半島地震復興応援」プロジェクトへの御礼

11月7日に第8回目となる「Happy Hacking Keyboard User Meetup vol.8」が開催されました。
11月7日に第8回目となる「Happy Hacking Keyboard User Meetup vol.8」が開催されました。

まずは、PFU常務執行役員 清水康也氏より、開会の挨拶が行われました。

「HHKBは12月20日に生誕28周年を迎えます。四半世紀を超えるクールブランドとして育ってきましたが、ここまで大きくしていただいたのは、本当に熱量が高いコアなHHKBファンのサポートがあってこそと思っています。」(清水氏)

2023年、27年ぶりとなる新シリーズ「HHKB Studio」を発表しました。北米発の企画で、色々な機能を搭載した新ジャンルに挑戦し、PFU史上最高の反響がありました。130以上のメディアに掲載され、Xでも2日連続でトレンド入りしたのです。PFUの公式サイトにも過去最高のアクセスがあり、そして発表から1か月半で半年分の受注をするなど、とても大きなインパクトがありました。

10月2日には「HHKB Studio 雪」を追加し、国内だけでなく北米でも予定数を上回る販売を記録。従来モデルよりも、女性のユーザーが多い傾向にあります。

PFU常務執行役員 清水氏。
PFU常務執行役員 清水氏。

「今日はもう一つお礼を申し上げたい。」と清水氏。クラウドファンディングサイト「Makuake」で募った「能登半島地震復興応援」に、1320万円が集まったのです。

「石川県かほく市も液状化の被害がひどく、我々の本社も壁が剥がれたりしました。我々PFUも被災者ですが、それと同時に周りの被災者の方を支援したいという立場から、リコーグループの一員として義援金を出したり、私たちのバレーボールチーム「PFUブルーキャッツ石川かほく」のメンバーによるボランティアも行いました。ただ、奥能登の現状を見ますと、復興が進んでいません。その中には、私たちが長年お付き合いさせていただいている輪島塗の大徹八井漆器工房さんもありました。PFUとして、工房を救いたいというのがクラウドファンディングを実施した経緯です。」(清水氏)

世界で最も高価なキーボードとしてギネスブックに掲載されている「HHKB Professional HG JAPAN」が2006年に発売されましたが、このキートップに漆塗りをしたのが、大徹八井漆器工房です。

クラウドファンディングが始まる前は本当に応援金が集まるのか不安でしたが、開始10分あまりで132万円というもっとも高い黒漆のキートップと「HHKB Professional HYBRID Type-S」のセットが完売してしまいました。HHKBファンの熱量を目の当たりにし、スタッフは皆、感動しきりです。

「能登半島地震復興応援」のクラウドファンディングに1320万円が集まりました。
「能登半島地震復興応援」のクラウドファンディングに1320万円が集まりました。

■2024年HHKBオーバービュー、累計出荷台数は71万台を超えた

続いて恒例、販売推進統括部長 山口篤氏による、マシンガントークオーバービューが披露されました。まずは、「HHKBの累計出荷台数が、71万台を突破! 内訳は国内82%、海外18%となっています。この3年間でぐぐっと伸びており、HHKBの2枚持ち、3枚持ちといったブームが原動力となっています。」と山口氏。

シリーズ別販売台数比率は、「HHKB Studio」が34%と存在感を示しました。HYBRID Type-S/HYBRIDの配列別比較では、昨年と比べて無刻印が4%減り、その分日本語配列が増えて53%になりました。

一般ユーザーが増えているからかと思いきや、司会の小山哲志氏によると、最近のエンジニアは日本語配列のキーボードを使うことが増えているそうです。そのため、販売台数が増えることで、日本語配列ユーザーも増えることになったようです。

ドキュメントイメージング事業本部 販売推進統括部長 HHKB戦略シニアエキスパート 山口氏。
ドキュメントイメージング事業本部 販売推進統括部長 HHKB戦略シニアエキスパート 山口氏。
HHKBシリーズの累計出荷台数が71万台を突破しました。
HHKBシリーズの累計出荷台数が71万台を突破しました。
配列別では、無刻印が減り、日本語配列が過半数となりました。
配列別では、無刻印が減り、日本語配列が過半数となりました。

「年代別に見ると、昨年0.2%だった10代が1%に増えているところが気になりました。10代で4万円するHHKBを買っていただくというのはすごいですね。」(山口氏)

もちろんボリュームゾーンは30代、40代というのは前年同様。とは言え、50代が22.7%から26.3%に増えており、ユーザー層も広がっていると言うことが伺えます。女性比率は残念ながら、0.3%減って4.7%。しかし、先日発売された「HHKB Studio 雪モデル」の販売台数が含まれていないので、年末まで集計すればもう少し女性比率が上がると予測しているそうです。

ユーザーアンケートには様々な声が寄せられました。「タイピングがしやすく業務効率が上がりました」「Apple Vsion Proで使用しています」といった嬉しいお声から、「ポインティングスティックを赤色で販売してほしい」「色々なカラーのキートップを出して欲しいです」などの要望もありました。「すべて読まさせていただき、今後の開発の参考にさせていただいております。」と山口氏。

2024年のユーザー登録アンケートの一部。
2024年のユーザー登録アンケートの一部。

■2024年の振り返り、3Dデータ公開、エイプリルフール、新しいエバンジェリストと盛りだくさんの年でした

「お約束通り、2月に「HHKB Studio」のキートップ3Dデータを公開させていただきました。日本のトータルダウンロード数は700件以上という状態です。私もDMM.makeでアルミ、ステンレス、クリアアクリルで作ってみました。ステンレスだと重すぎて、HHKBに付けると沈んでしまうのでやめました。(笑)」(山口氏)

「HHKB Studio」のキートップ3Dデータが公開されました。
「HHKB Studio」のキートップ3Dデータが公開されました。
誰でもオリジナルキートップを作ることができるようになりました。写真は重すぎたステンレスのスペースキー。
誰でもオリジナルキートップを作ることができるようになりました。写真は重すぎたステンレスのスペースキー。

同じく2月には、HHKBカラーキートッププロジェクト第一弾となる「桜」の販売が開始されました。日本で1700台、グローバル含めて2000台とわずかな販売数で、あっという間に売り切れてしまいました。刻印タイプの文字も赤く、ソメイヨシノを意識して作ったそうです。

HHKBカラーキートッププロジェクト第一弾となる「桜」がお目見え。
HHKBカラーキートッププロジェクト第一弾となる「桜」がお目見え。

「『HHKB Studio』の無刻印キートップも出しました。そもそも墨って無刻印のようなものですが、ちゃんと無刻印としてトップ・オブ・トップを目指していただく方がいらっしゃいます。本当の没入感を味わっていただくために作ったので、ぜひ試してください。」(山口氏)

6月には、復興応援のクラウドファンディング「能登半島地震復興応援 Re:japan」を実施しました。ギネスブックに載った最も高いキーボード「HHKB Professional HG JAPAN」は50万円でしたが、なんと今回は132万円となっています。これは、キートップのカドの稜線部分に漆を定着させるために使用する金の値段が、ここ数年上がったからとのことです。


SNSネタはまずはバレンタインデー。昨年に引き続き、HHKBチョコレートにチャレンジしました。昨年は大失敗でしたが、今年は成功。もちろん、最後にはみんなで美味しくいただきました。

エイプリルフールネタでは、HHKBとは真逆に、キーの多さ世界一というキーボードの画像を投稿しました。笑えるネタなのですが、この投稿を見たクラウドファンディングの会社から実現させませんかと電話がかかってきたそうです。

タッチ&トライスポットも増えました。東京・神奈川を筆頭に、名古屋・神戸・金沢・札幌などに展開し、昨年よりも14施設増え、23施設26店舗でHHKBに触ることができます。

タッチ&トライスポットが近くにないという人も、株式会社ゲオが運営する「HHKBレンタルサービス」にて、HHKBを手軽にお試しいただくことが可能です。


エバンジェリストも今年は3人増えました。朱野帰子さん、せきぐち あいみさん、吉田尚記さんです。

HHKBエバンジェリストも3人増えました。
HHKBエバンジェリストも3人増えました。

朱野帰子さんは、小説家で2018年に刊行した「わたし、定時で帰ります。」がTBSでドラマ化されています。キーボードなんてなんでもいい、と思っていたところから、HHKBの沼にはまって、エバンジェリストになっていただきました。

せきぐち あいみさんは世界的に有名なVRアーティストで、世界中を飛び回って活躍されています。2020年にはPFUとのコラボで、未来のオフィスイメージをVRで描いた動画を作成しています。

吉田尚記さんはニッポン放送のアナウンサーです。吉田さんは会場に来ていたので、登壇しました。

「僕はアナウンサーですが、会社の中で一番企画書を書いています。Twitterで番組をやったり、VRの番組を作ったり、Vtuberの方たちとオールナイトニッポンオルタナティブを始めたりしています。冗談じゃなく、HHKBを使っててよかったとおもいます。明確に疲れが違います。万年筆を使い始めると、自分でも思いもよらないくらい書いたりするじゃないですか。HHKBも、そういう効果ものすごくあると思います。」(吉田氏)

ニッポン放送のアナウンサー 吉田氏も登壇。
ニッポン放送のアナウンサー 吉田氏も登壇。

乾杯の挨拶はHHKB主席エバンジェリストの松本秀樹氏が行った。

「今紹介がありました主席エバンジェリストの「しゅせき」は「酒」の方の席なので、誤解がないようにお願いします。CDO(チーフ・ドリンク・オフィサー)とも言います笑 HHKBユーザーミートアップは8回目です。HHKBは12月20日で28歳の誕生日を迎えます。HHKBが末永く皆さんと共に元気にビジネスが続くということと、本日お集まりの皆様のご健勝を祈念して、乾杯したいと思います。それでは行きますよ……ヘンタイ!」と乾杯した。

ちなみに、HHKBユーザーミートアップでの乾杯の掛け声は「ヘンタイ!」なので、来年以降参加する皆さんは頭の隅に入れておいてください。

HHKB主席エバンジェリストの松本氏が乾杯の挨拶を行いました。
HHKB主席エバンジェリストの松本氏が乾杯の挨拶を行いました。

■キーボードの代替が見えてきたものの、魂を込めるならHHKBが必要

スペシャルトークセッションのテーマは「ワークスタイル変革 VR、XRの今後とHHKBの可能性」となっています。登壇するのは東京大学 情報学環教授、ソニーコンピューターサイエンス研究所フェロー・副所長 暦本純一氏、ウーバーイーツ配達員改め、AI/ストラテジースペシャリストの清水亮氏、ファシリテーターを務めるのはフリーランスライター ThunderVolt編集長の村上タクタ氏の3人で、皆さんHHKBエバンジェリストです。

テーマに合わせて、3人とも「Apple Vision Pro」を被った状態で登場し、度肝を抜いた。それぞれ、「Apple Vision Pro」を操作するために、空中で指を動かしていた。

スペシャルセッションのゲスト3人は「Apple Vision Pro」を被って登場しました。
スペシャルセッションのゲスト3人は「Apple Vision Pro」を被って登場しました。

村上氏:今日こんな格好してきたのは、これからVRでキーボードがどうなっていくか、などインターフェースについてお話を伺いたいからです。

清水氏:やっぱり家にいる時と新幹線や飛行機に乗ってる時でまったく同じ環境でプログラミングできるのがいい。便利なのが「HHKB Studio」のポインティングスティックで、「Apple Vision Pro」の視線操作だと間違って隣のボタンを押してしまう。結構クリティカルなこともある。この「HHKB Studio」があって初めて「Apple Vision Pro」が完成すると言っていい。

「HHKB Studio」があって初めて「Apple Vision Pro」が完成する、と清水氏。
「HHKB Studio」があって初めて「Apple Vision Pro」が完成する、と清水氏。

村上氏:僕らが小さいころ、あまり身近にコンピューターがありませんでしたが、今はコンピューターがないと生きられないぐらいの状態になっています。どこで大きい変化ポイントがあったのでしょうか?

清水氏:やっぱりiPhoneだと思います。当時、インターネットが出ても、普通の人はあまりコンピューターを使ってませんでした。それが、iPhoneが出たことによって、爆発的にコンピューターが買い求められるようになりました。すごく革命的だと思います

村上氏:40年ぐらい前からコンピューターを使い始めて、キーボードを使っていますが、これしか言葉を入力する方法はないんでしょうか?

暦本氏:ジェスチャー入力とかありますが、割と最近までやっぱりキーボードが1番早いとは思ってました。最近僕は、喋らずに入力するサイレントスピーチを研究しています。センサーを使って、声帯を振動させないで、入力する方法です。これまでは、音声入力しても間違いが多くて訂正する必要がありましたが、今はChatGPTだと間違っていても大体通じます。そのぐらい自然な会話ができる時代が来たのが、この1年のことなので、そこは非常に変わってきてます。

キーボード以外の入力方法を研究する暦本氏。
キーボード以外の入力方法を研究する暦本氏。

清水氏:僕もコンピューターの使い方が構造的に変わってきてます。最近は、わざと車を借りて移動して、車の中でChatGPTとずっと喋ってます。運転しながら、量子生物学で線虫を使った実験ってどんなのあるの?って聞いたりして勉強になる。しかも、ログが残ってるので、ChatGPTにまとめてと言えば、その時喋ったアイデアが全部まとまるんです。正直それで本を書けてしまいます。だからキーボード打ってない。

村上氏:私も朝起きて散歩しながら、●●の新製品が出たので、このネタを書こうと思うので箇条書きでまとめて、と言いながら歩いてる怪しい人になってます。

暦本氏:最近、Amazonのレビューに、AIのレビューが付いてます。そこに商品のいいとこ悪いとこが書いてあるので人間がいらなくなってます。

清水氏:YoutubeのコメントもAIになってますよ。配信側のアプリだと、生成AIが作ったコメントから好きなやつを選べばいいから凄い楽です。

村上氏:Apple Intelligenceの英語版で、例えば「イベント来ますか」というメールが来たら、行く場合と行かない場合の返事を生成してくれます。あれはちょっと楽ですね。

あちこちに飛ぶ話題をうまくファシリテートする村上氏。
あちこちに飛ぶ話題をうまくファシリテートする村上氏。

清水氏:でも、日本語の文章を喋って書くのはなかなか難しいじゃないですか。僕はキーボードの方が楽だと思います。僕はブログ書くときには1文字書くごとに読者の感情がどういう方向に行くかを計算しています。やっぱり魂を込めたものを作る時には、どうしてもキーボードが必要です。魂の入ったプログラムを書く時もAIは使わない。やっぱり、AIには魂が入ってないから。

村上氏:VRデバイスを付けてる時は音声入力が結構便利じゃないですか。VRでも、やっぱりキーボードが残ると思われますか?

清水氏:残ると思うけど、ただ、それは古い人類だなという気もちょっとするよね。

暦本氏:最近ちょっと首を痛めまして。自分ではんだ付けしてキーボードを作りました。これは、片手で使うんですけど、VRゴーグルを付ければ、街を歩きながらインプットできます。

清水氏:HHKBにはもうマイクとコンピュータを載せてLLM(Large Language Model)を走らせればいいと思ってます。もう突き抜けて、HHKBには次のiPhoneになってほしいよね。これだけ持って歩きたいよ。

暦本氏:ハイエンドならいくら高くても買うという人はいますよ。コンシューマーの洋服の世界だって、数千円のものもあれば、何十万するものもあります。オーダーメイドもあります。4万円って別に安いじゃないですか。毎日、着ているスーツに4万円しか払わない人と40万円、400万円払う人がいます。キーボードも毎日使っているのに、たった4万円で満足するんですか、と。

村上氏:自転車とかでもすぐ100万円となりますよね。

清水氏:もっと自転車が高いのと同じように、例えばカーボントップとか、機能性を重視した結果、30万円です、みたいに高級になるといいな。あと、もう少し軽くなるといい。

村上氏:「HHKB Studio」を海外出張とか行くときに持っていくのはちょっと重いですよね。

清水氏:重いよね。それでも僕はむしろ重たいことによって、どのくらいHHKBを愛してるのかを自分に問いかけるわけ。問いかけて、よしエジプトに一緒に行くか、という感じで持って行きます。

村上氏:最後に今後のHHKBについてご意見をください。

暦本氏:ちゃんとしたキーボードを使うっていうマインドがあります。例えば文章を書く時にいい紙に書きましょうとか、ボールペンではなく万年筆にしましょう、というのは生活の根源的豊かさです。どうでもいいキーボードでも打てますが、そんなことで人生を無駄にしていいの、と思います。どうせ自分が長く触ってるものなら、そこに投資しなくて、どうするの?と思います。

清水氏:やっぱり「HHKB Studio」を作ってくれたことには本当感謝してる。正直、最初すごいのが出るんだよと聞いて、何言ってるんだ、と思ったけど、まじ最高。人類がキーボードを使わなくなったとしても俺は使う。俺の魂の相棒だから。


第8回目となるユーザーミートアップも盛況でした。会場では、HHKBや関連製品が販売されており、皆さんすでにお持ちのはずですが、それでもたくさん買われており、HHKB愛がさく裂していました。来年のHHKB界隈がどうなるのか、そして第9回のユーザーミートアップが今から楽しみです。

当日の様子は、こちらからご覧いただけます。

執筆者

柳谷 智宣

IT・ビジネス関連のライター。Windows 98が登場した頃からPCやネット、ガジェットの記事を書き始め、現在は主にビジネスシーンで活用されるSaaSの最先端を追いかけている。飲食店や酒販店も経営しており、経営者目線でITやDXを解説、紹介する。

関連メディア