HHKB 25周年のユーザーミートアップが開催! HHKBの誕生秘話から未来までを語り尽くす

HHKB 25周年のユーザーミートアップが開催! HHKBの誕生秘話から未来までを語り尽くす

2022年1月13日公開

HHKBユーザーミートアップのオープニング

2021年12月10日、「HHKBユーザーミートアップ Vol.5」が開催されました。今回はコロナ禍のためオンライン開催となりましたが、筆者は取材のために現場入りさせていただきました。

「HHKBユーザーミートアップ」の第1回は2017年9月23日、秋葉原のUDXギャラリーで開催されました。HHKBの発売20周年を記念して開催され、筆者も記事執筆のため取材で参加したのを覚えています。

そこから5年。25周年として第5回目のユーザーミートアップです。Zoomには約700名の事前応募があり、同時配信しているYouTube Liveでも多数の方が視聴してくれました。開催は18時からだったのですが、昼過ぎからのリハも見せていただきました。

巨大なグリーンバックの前に設置されたセットで、多くのスタッフが忙しく作業しています。司会の小山哲志さんをはじめ、登壇者が入れ替わりリハを行います。なかなか緊張感のある現場でした。

リハーサルの様子

当日昼から、入念なリハが行われていました。


控え室には「HHKB Professional HG」の実機がありました。2006年に発売されたアルミ削り出しフレームを採用した高剛性のHHKBです。重量はなんと1.1kgで、価格は26万2500円(税込)でした。現在は販売を終了しているのですが、登壇者たちはそのタイピング感のよさに感動していました。

2006年に発売されたHHKBを触る登壇者

控え室ではPFUの松本さんとセッションに参加するメンバーがアルミのHHKBを触りながら盛り上がっていました。


緊張感に包まれた中、いよいよ本番がスタート!

18時からいよいよ本番が始まりました。最初にPFU 社長室 シニアディレクターの松本秀樹さんから挨拶があり、続けてHHKBの生みの親である和田英一先生から25周年のメッセージをいただきました。

和田先生はなんと今年で90歳。1931年生まれで、同年満州事変が始まったそう。その後、太平洋戦争が始まり、1945年に戦争が終わるまでの15年間は、和田先生にとって「戦争の時代」だったとのことです。

「その後の75年間は『平和な時代』、別の言い方をすれば『技術開発の時代』です。この75年を3で割ると25年。平和と開発の75年間のうち後半の3分の1が、ハッピーハッキングキーボードの時代なんです。技術革新の75年の時間の3分の1をHHKBの歴史が占めている、というのは考えてみるとびっくりすることだと思います。すごい寿命ですよね」と和田先生。

和田先生からHHKBの25周年メッセージをいただきました

現在はIIJ技術研究所 顧問をしている和田英一先生です。

和田先生は「人生100年時代のHHKB」というスライドを表示し、2017年に流行った「人生100年時代」という言葉を紹介しました。デンマークの研究者によると、現在の平均余命の傾向が続く場合、今日、豊かな国で生まれた赤ちゃんの半数以上が100歳まで生きるだろうという内容です。

「HHKBを見ると、3000万回以上のキー寿命があります。仮に1日1万回キーボードを叩き、1年を300日とすると、3000万回叩くには10年かかります。よく使うキーが10個とすると、1個のキーの負担は10分の1となるので寿命は100年になります。よく使うキーが20個あれば200年になります」(和田先生)

「人生を100歳としても、HHKBの寿命はそれを上回る」と和田先生は結論づけました。
HHKBにリチウムイオンバッテリーを搭載して充電できるようにして欲しいという声も聞きますが、それでは数年でバッテリーの寿命がきてしまいます。HHKB HYBRIDの電源が乾電池になっているのは、今後もずっと使われるだろう乾電池を採用することで、末永くHHKBを使い続けられるようにするためなのです。

「皆さんも長生きして欲しいし、HHKBも長い間使っていただきたいです」と和田先生は締めてくれました。

「人生100年時代のHHKB」というテーマで講演する和田先生

人生100年時代が来ても、HHKBの寿命はそれを上回る、と和田先生。

若年層や女性のユーザー比率が増加! 累計出荷台数は60万台を突破した

次は、PFU スキャナー事業部 シニアディレクター 山口篤さんからHHKBにまつわるいろいろな発表が行われました。

HHKBの累計出荷台数が60万台を突破

HHKBの累計出荷台数が60万台を突破したと報告するPFUの山口さん。

HHKBの累計出荷台数は2021年5月時点で60万台を突破。国内と海外の販売比率は83%と17%で、比率は前年とほぼ同じです。シリーズ別のシェアを見ると、「HHKB HYBRID」と「HHKB Classic」が1%ずつ増えているものの、「HHKB HYBRID Type-S」が84%とダントツでした。カラー比率では、「雪」モデルを含まない状態でも、白が6%伸び、白38%:墨62%という結果になりました。

「カラー比率は今年は若干白が増えました。2021年度のカラートレンドを調べてみたらグレーでした。どっちやねん(笑)」(山口さん)

HHKBのシリーズ別のシェアとカラー比率

HHKBのシリーズ別のシェア(左)とカラー比率(右)

配列は日本語配列が4%増え47%になっている一方、無刻印が3%ダウンで9%になっていました。「ぜひ、皆さん(無刻印への)チャレンジお待ちしておりますので」と山口さん。

ユーザー年齢では、20代と30代が大幅に伸びました。若い世代にとってはHHKBの価格は高額に感じると思いますが、すごい状況です。女性ユーザーは0.6%増えて3.5%に。全体的な数は少ないですが、それでも2割増しペースでユーザーが増えているのは好感触です。

「なんと言ってもエバンジェリストの竹森みずほさん(マルチアーティスト)、米田まりなさん(整理収納アドバイザー)、富永彩乃さん(ITジャーナリスト)、なおしまさん(散財TV直島)に、ファッショナブルな使い方をしていただいているんです。こういう方たちのご活躍もあって女性層が増えてきたのかなと思っています」(山口さん)

HHKBのキー配列の割合と女性ユーザーの割合

キー配列の割合(左)と女性ユーザーの割合(右)

2021年10月、HHKB 25周年を記念して純白のHHKB「雪」モデルが発売されました。 発売のきっかけは、なおしまさんがYouTubeで白いキートップが欲しいと叫んだり、ブロガーの鳥羽恒彰さんが「HHKB BT」日本語配列の白モデルをリューターで削って無刻印化させたことです。

そこで日本語配列と英語配列で1250台ずつ、純白の「雪」モデルを発売。さらに、無刻印のキーキャップも300個ずつ作りました。バード電子の斉藤さんは「雪」の無刻印モデルにキートップの文字を削るという離れ業に挑戦。美しい仕上がりを見た松本さんは「これ墓石じゃね?」と言っていたそうです。

無刻印モデルにキートップの文字を削り出した写真

バード電子の斉藤さんが「雪」の無刻印モデルにキートップの文字を削りました。

最後に、今年新たにHHKBエバンジェリストになられた13名が紹介されました。これで、エバンジェリストは総勢37名になります。

HHKBエバンジェリストの紹介

新しく13名の方がHHKBエバンジェリストに!

文章を入力するときHHKBが語りかけてくる? 最先端技術に通ずる3人の軽妙トークが炸裂

スペシャルトークセッションは「~コンピュータインターフェイスとしてのキーボードとインターフェイスの未来~」というテーマで、2021年からエバンジェリストに加わった清水亮さん、暦本純一さん、落合陽一さんが登壇しました。落合さんはリモート出演です。途中、松本さんからHHKBEERが登壇者に差し入れられて、トークはヒートアップしていきました。

スペシャルトークセッションの様子

清水亮さん、暦本純一さん、そして落合陽一さんがリモートで登壇しました。

まずはファシリテーターの清水さんから「お二人とHHKBの出会いは?」というお題が出されました。

暦本さんは、コンピュータサイエンス誌「bit」で和田先生が連載していた記事をずっと読んでおり、こだわり配列のキーボードがついに発売されるということで、飛びついて買ったそうです。配列があるべきところにすべてある、余計なものは何もない、というところが気に入っているとのことです。

落合さんは大学生の頃から使い始めました。キーボードを打つ回数が増えて、このままだと腱鞘炎になると感じてHHKBを買ったそうです。

「九州の実家がボヤで燃えたんですけど、HHKBが灰だらけになってしまいました。それをエアダスターで吹いたら使えたので、HHKBは割と強いな、と思いました」と落合氏。誰も聞いたことがない話を披露してくれました。

清水さんは20代の時、最初はファッションで使い始めたそうです。しかし、UNIXをメインで使うようになると、HHKBが気に入ってしまいました。

落合さんは複数台のHHKBを利用していますが、中でもアルミ削り出しフレームの「HHKB Professional HG」が気に入っているとのことです。アルミタイプを再販して欲しいと熱烈アピールしていました。

「アップルが60万円のモニターを出しているんだから、40万円のキーボードがあってもいいはずです」(落合さん)

「就職祝いにいい時計をあげる代わりに、アルミのHHKBを贈るというのもいいですね」(清水さん)

英語配列か日本語配列かというテーマでは意見が分れました。落合さんと暦本さんは生粋の英語配列ユーザーで、清水さんは日本語配列ユーザーです。HHKBユーザーの中でも英語配列は44%、日本語配列は47%と拮抗しています。

「JIS配列を使ったことがないからメリットがわかりません。小学生の頃、家のキーボードで「@」が打てなかったことは覚えています」(落合さん)

HHKBの日本語配列モデルには右下にカーソルキーが用意されていますが、落合さんは知らなかったようで、とても驚いていました。落合さんは、右下のスペースに自分の名前を書いており、「ここって自分のサインを書く場所じゃないんですか(笑)」とボケていました。

スペシャルトークセッション 落合陽一さん

英語配列の右下のスペースにサインしたHHKBを見せる落合さん。

今後、キーボードは残っていくのでしょうか、という質問に暦本さんは「結構、キーボードはしぶといと思います。頭の中で入力できるようになったら、使わなくなると思いますが」と回答。

人間の脳はPrediction Machines(予測機械)で、何が起きるかわかると、次の行動へのパイプラインがつながるそうです。HHKBのキーにはストロークがあるので、ある程度押したら入力されると脳が判断し、高速でループすることでタッチタイピングができます。

「頭で考えているより筋肉で考えている人が結構多そうですよね。キーボードの方が考えてると思います。キーボードのアフォーダンスに導かれて文章の癖が変わったりします」(落合さん)

「キーボードを作った人も考えてなかったことが出てきましたよ(笑)」(清水さん)

「MacBookはキーストロークが浅いので予測が効きません。HHKBだとストロークがあるので、押しながら、『いや本当にそれでいいのか、お前』と語りかけてる感じが確かにする。湾岸ミッドナイトっぽくなってきましたね(笑)」(暦本さん)

落合さんも、今後キーボードは長く使われると予想しています。VRやARなどのメタバースでも、HHKBを使っているそうです。無刻印のHHKBを使っているユーザーならではの強みでしょう。

「メタバースでは、あの人ってキーボード使ってるらしいよ、うわー昭和ーって言われると思います。俺たち目線でフリック入力してるのに、なんて言われたらどうしよう(笑) そうしたら、僕は昭和のキーボード人類の最後の生き残りとして、みんなが死に絶えた後、石でキーボードの墓を作ります」(落合さん)

「確かに、HHKBの墓石とかすごい格好いいですよ。押すと語りかけてくるとか(笑)」(清水さん)

今後、HHKBはどうなって欲しいですか、という問いに、「個人的にはHHKBのブランドをもっと確立して欲しい」と落合さん。HHKBのiPadスタンドや愛用のパームレストのような商品がもっと欲しいそう。最後には犬用や猫用のキーボードを出そうという話で盛り上がりました。

最後に、小山さんからあらかじめ募集していた質問が投げられました。「HHKBが次の25年に使われ続けるための条件は何でしょう?」という質問の回答がすごかったのでご紹介します。

「標準価格が50万円くらいになって、本気出したら150万円する、カメラの高級ブランドみたいな路線もやって欲しいです。本当に使いたい人が金に糸目を付けずに買って、親子3代持つ財産になるような」(清水さん)

「万年筆も100年前の万年筆があるので、HHKBも洗練されて、工芸品のような領域になるかもしれないですね。エボナイト製とか。ちょっとクラック入っても、金継ぎしながら使うような。金継ぎすると『景色』ができるというすごく美しい言葉がありますけど、そんな美意識にHHKBがいくといいですね」(暦本さん)

「100年持つにはプラスチックが弱いので、やっぱりアルミじゃないですかね。アルミが今の値段で出ればいいんですよ」と落合さんはブレずに最初の要望を繰り返して笑いが生まれました。

25年前のHHKB誕生から現在に至るまでのバックストーリーに驚きが連発

最後のトークセッションは「~HHKB黎明期 25年前何があったのか~」というテーマで富士通システム総合研究所の白神一久氏、テラテクノス株式会社取締役CTO 八幡勇一氏、そして松本さんが登壇しました。白神さんと八幡さんはPFU時代、スパークステーションというSUNワークステーション互換機の開発をしていた方です。まずは松本さんの自己紹介から始まりました。

「HHKBが生まれた時、最初はマネジメント側にいたのですが、何でこんなものを作るんだ、とちょっと否定派でした。僕は八幡さんと同期ですが、皆さんがPFUを去っていく中で、気がついたら私が育ての親みたいになってしまいました。腐れ縁というか、HHKBを今まで見守ってきた者です」と松本さん。

トークセッションの様子(HHKBの誕生秘話)

左から小山さん、白神さん、八幡さん、松本さん。

#1誕生秘話~#2配列決定の経緯

和田先生がPFUテクニカルレビュー誌に寄稿したキーボードの論文を読んだ白神さんは、それを感想と共に熱い想いを上司に伝えました。その後、和田先生と話をする機会があり、「新しいキーボードを作ってみませんか」と声をかけられました。そのことがきっかけで、試作することになりました。

「私はソフトウェアエンジニアだったので、ハードウェア作りは八幡さんにお願いしつつ、実際のキーボードをカッターでごりごり切ってボンドでつなげたりサンプルを作るお手伝いをしました」(白神さん)

PFUはスパークステーションの開発をしていたので、SUNのキーボード仕様は知っていました。PC部隊もいるので、IBM PCの仕様もわかっています。Macについては、アメリカ出張に行くついでに大きなMacを担いで帰ってくるようなファンがいて、Macにも詳しい人がいたそう。それらの知見を合わせて配列を詰めていくのですが、一筋縄ではいかなかったそうです。

和田先生が考えたAlephキーボード配列は綺麗なのですが、文字が打てればいいという、考え方が真っ直ぐなキーボードです。実際にSUNやIBM PCやMacにつないだ場合、どうしてもキーが足りませんでした。Macだと、スペースバーの左右にオプションとコマンドキーが必要になるため、追加したそうです。その過程でやりとりした和田先生からのメールが残っており、八幡さんが読み上げてくれました。

「ほんとうに駄目なのでしょうか。私にとってはaltをspace barの両側に置くのも譲歩だったのですが。(本当は置きたくない) それに左右非対称なのも気に入らない。もし、meta、altなしのキーボードをわれわれが作るとしたら、Mac使いとは何の工夫努力もせず、見向きもしない人種なのでしょうか、と言っていたんです(笑)」(八幡さん)

どうしても使えないなら、Macは対象機から外しても仕方がない、と仰っていたそうです。当時の和田先生の熱意が伺えます。そうは言ってもメーカーとしては一定数を販売しなければなりません。結局、今の配列のように3機種対応の配列になりました。

トークセッションの様子(配列決定の経緯)

HHKBのキーボード配列を決めるのは一筋縄ではいきませんでした。

当初、ファンクションキーは裏メニューのような位置づけだったそうです。現在、カーソルキーは右側のEnterキーの近くにありますが、最初は左側に置いていました。BIOS設定時だけ使えればいいというわけです。しかし、Windowsユーザーからカーソルキーを片手で操作したいから、右側に持ってきてくれ、と言われたため変更したそうです。

「Emacs(プログラムを書くエディタ)使いとしては、Controlキーが「A」の横にあるというのは、すごく重要なファクターです。そこは絶対変えたくありません。自分が本当に欲しいキーボードでもあったので、製品化されることを期待していました」(白神さん)

#3 PD-KB01発売エピソード~#4普及策

「それで、今あるPFUダイレクトの原型になる通信販売を始めました。当時はまだパソコン通信で通販を始めたという、本当に先駆け的なものでした。最初の「PD-KB01」はSUNワークステーションとPCにしか対応していなくて、1年くらいしてMacに対応しました。おおらかな時代でしたよね。1999年金型の償却が終わったとたんに、1万円値下げしたという(笑)」(松本さん)

潤沢な広告宣伝費もなかったので、和田先生の言葉をうまく使い、カウボーイは鞍を持ち歩くので、プログラマーはHHKBを持ち歩くべきだとプロモーションしました。


アメリカ西部のカウボーイたちは、馬が死ぬと馬はそこに残していくが、どんなに砂漠を歩こうとも、鞍は自分で担いで往く。馬は消耗品であり、鞍は自分の体に馴染んだインタフェースだからだ。
いまやパソコンは消耗品であり、キーボードは大切な、生涯使えるインタフェースであることを忘れてはいけない。
[東京大学 和田英一 名誉教授の談話]


馬の鞍伝説の動画

馬の鞍伝説は、後年、映像化されました。

製品を作る際は商標も登録します。しかし、最初に「Happy Hacking」を商標登録しようとしたら、特許庁から拒絶通知が来たそうです。当時はハッカーとかハックといった単語は、悪いことというイメージがあったのです。そこで「ハッカーズ」(スティーブン・レビー著)という本を引用して、悪い意味はないという反論書を出し、受理されました。もちろん、今はきちんと商標登録されています。

アメリカで初代HHKBを販売したところ、価格が高いためかあまり売れなかったそうです。そこで、安価な「HHKB Lite」を出しました。八幡さんが台湾に行って、いくつものキーボードメーカーと話をしたそうです。

アメリカでも「Happy Hacking」と書いてあるのが問題になり、その部分にネームプレートを貼って対応することにしました。当初のロゴもWindowsのフォントを斜めにした感じのものでしたが、格好悪いとこということで、アメリカの方で現在のマークを作ったそうです。

その後、2001年に「HHKB Lite 2」が発売されます。日本語配列とカーソルキーが欲しいという要望があったためです。

「アピールポイントはスペースバーの下側が丸くなっているところです。直角だと手が当たってしまうので、丸くしました。また、カーソルキーの奥を少しへこませているんです。あれは、爪が長い女性でも使えた方がいいんじゃないか、という細かいことをやってます。初代HHKBを生き残らせて、市場を何とか広げたいとHHKB Lite 2を作りました」(八幡さん)

#5 HHKB Professional~#6拡販の工夫

2003年には「HHKB Professional」が発売されました。積極的に新しい製品を世に出したい、という思いがあったためですが、切実な問題もありました。それまでHHKBを作っていた会社がキーボードから撤退するということと、そもそもPD-KB02用のマイコンがなくなり、もう作れないということもありました。

そこで当時、キーボードで評判になっていた東プレさんに話を持ちかけ、企画が始まったのです。そういう状況の中、松本さんは無刻印のHHKBにチャレンジし、結構話題になりました。

キートップに何も書いていないキーボードは衝撃でした。最初は台数限定で出しましたが、あっという間に売り切れていたのを覚えています。

「「HHKB Professional」になって、昇華印刷で最初白のモデルを出しました。何万回叩いても消えないということで、ブラックモデルを出そうとしたのですが、昇華印刷は黒しか印字できません。そこで、チャコールというかグレーというか黒に近くして、ぎりぎりで印字が見えるところを探りました。それだったら思い切った名前にしようと「墨」と付けたら、これがクールだと人気が出ました」(松本さん)

トークセッションの様子(無刻印モデルの登場)

キートップに何も印字されていない無刻印モデルの登場は衝撃でした。

#7着実な進化~#8「ロングライフデザイン賞」、集大成「HYBRID Type-S」

2019年、HHKBには大きな動きがありました。HHKBの集大成である「HYBRID Type-S」が完成したのです。

「この年に、ロングライフデザイン賞をもらえました。20数年間、HHKBをやってきて、この賞をいただいたのはメーカー冥利に尽きます。受賞式には和田先生にも出ていただきました。これは我々の誇りだと思ってます。HHKBを出せた、というのは本当に嬉しかったですね。ファンの方とうちのエンジニアに感謝しかありません」(松本さん)

#9ビジネスモデル転換~#10最後に

最後にそれぞれから一言もらいました。

「HHKB HYBRIDモデルを使わせてもらっていますけど、すごく使いやすいキーボードですので、皆さんもぜひご愛顧ください」(白神さん)

「最初から馬の鞍をどうやったら長く持たせられるかというのを考えながらやって来ましたけど、これが続いているというのはとても素晴らしいことだと思っています。これからも使い続けていただければと思います」(八幡さん)

「前のセッションでいろいろな話が出ましたけど、そこにいろんなネタというかヒントがあると思っていて、HHKBも次世代のことを考えなければいけない時代に来ているのかなと思います。

最後に、HHKBを25年ありがとうございました。和田先生と八幡さん含め、最初のコンセプトデザインというのがこれだけ優れていたから、25年間生き延びてきたんだと思っています。

2年前、「HHKB HYBRID」を出した頃から100%直販にしました。それからタッチ&トライスポットをパートナーの方たちと一緒になってやっていただく。さらにエバンジェリストやファンの方々も一緒になって、プロモーションを盛り上げていく、そういった素晴らしいビジネスモデルができたんじゃないかなと思います。

私自身、HHKBに携わって来られて、本当に幸せに思っています。これからもさらに25年、この商品が生き延びられるように、PFUの若いメンバーに期待したいと思います」と松本さんが締めてくれました。

登壇者の集合写真

配信が終了したあと、登壇者で撮った集合写真です。

第1回目から参加させていただいているHHKBミートアップはとても楽しみにしていました。残念ながらオンライン配信となり、寂しいかなと思ったのですが、現場は大盛り上がりでとても楽しかったです。この熱量は映像を見られた方にも伝わったのではないでしょうか。密度の濃い2時間半に参加でき、HHKBの勢いはまだまだ止まらないな、と実感しました。

[プロフィール]


執筆者
柳谷 智宣

IT・ビジネス関連のライター。Windows 98が登場した頃からPCやネット、ガジェットの記事を書き始め、現在は主にビジネスシーンで活用されるSaaSの最先端を追いかけている。飲食店や酒販店も経営しており、経営者目線でITやDXを解説、紹介する。