HHKB HISTORY ~HHKBの軌跡~
新たな方向に磨きをかけた2モデル
一度は「究極」を形にしながらも、「HHKB」の進化は止まりませんでした。シリーズの中核である『HHKB Professional2』(2006年3月発売/USB2.0対応HUB搭載)をベースに、二つの方向に磨きをかけたモデルをリリースしたのです。『HHKB Professional Type-S』と『HHKB Professional BT』です。
2011年6月発売の『HHKB Professional Type-S』は、静電容量無接点方式のキー内部設計を一新して高速タイピング性(Speedy)と静粛性(Silent)を向上させた意欲的な製品でした。キーストロークを従来の4.0mmから3.8mmに調整し、駆動部の噛み合わせをタイトにすることで、従来よりも高速の、また打ち損じもより少ないタイピングを可能にしました。さらに、キー内部に緩衝材を取り入れることで打鍵音を30%低減(当社規定の測定方法によります)。タイピングの心地よさに軽快さも加わった『HHKB Professional Type-S』は、速さを追求するプロのニーズに応えるモデルでした。
そして2016年4月発売の『HHKB Professional BT』では、「HHKB」がついにワイヤレス化(Bluetooth Ver3.0に対応)を果たしました。入手しやすい乾電池による駆動方式を採用し、給電専用USBコネクターも装備しているため、何の心配もなくワイヤレスで操作することができます。さらにはパソコンのみならず、タブレット、スマートフォン、ノートパソコンなどの多彩なデバイスで利用できる機能も備え、「HHKB」を「いつでもどこでも」使いこなしたいユーザーが長らく待ち望んだモデルでした。
キー内部構造を新しく設計し、高速タイピング性と静粛性を向上させた『HHKB Professional Type-S』。カラーは白のみの展開。
ワイヤレスの『HHKB Professional BT』。ブースターをイメージさせる背面の電池ボックス(単3乾電池2本収納)が外見のアクセントにもなっている。カラーは墨だけの展開ののち、2017年に白が追加された。
本質はいつまでも変わらない
上記の2モデルで示した新しい方向性はより多くのユーザーの心をとらえ、「HHKB」の今後に対する期待をいっそう高めることにもなりました。果たして「HHKB」はこの先、どこに向かうのか――その答えは、実は最初から決まっていました。「HHKB」が目指すのは、プロの要求に応える上質のタイピングの実現という、ただ一点だけだからです。1990年代半ばに和田英一氏が示した哲学とアイデアは常に「HHKB」の根幹です。高速タイピング性もワイヤレス化への対応も、プロのための合理的なキー配列と心地よいキータッチという「HHKB」の本質を担保した上で実現したものです。逆にいえば、揺るぎない本質あるいは根幹が確立されているからこそ、タイピングの高速化やワイヤレス化への対応という挑戦と実現が可能だったともいえます。いちばん大切なのは「変わらない本質」です。
そして2019年、ついに「HHKB」は最高傑作といってよいラインアップに生まれ変わりました。『HHKB Professional Hybrid』を中核とする現行のラインアップへと刷新されたのです。それは「HHKB」が25年にわたる長い旅の果てに到達した、一つの完成形でした。
東京大学名誉教授・和田英一氏。
愛用の「HHKB」とともに。